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相続税の申告までに必要な手続の流れと各種期限について

身近な方が亡くなると、その後さまざまな手続に追われて慌ただしくなることが予想されます。遺産相続の手続、被相続人(亡くなった方のこと。)が契約していたサービスの解約や引継など、しないといけないことがたくさんあります。相続税の申告をしないといけないケースもあり、このときは「期限」に注意が必要です。

作業がたくさんあっても一つひとつ着実にこなしていけばいつかは終わりますが、期限が設けられていると、のんびりはしていられません。期限に間に合わせるには全体の流れを把握しておくことが重要ですので、当記事で、相続税申告までにすべき手続の内容やその流れのイメージが掴んでいただけるように紹介をしていきます。

 

相続税申告までの全体の流れ


相続税申告をゴールとした場合の手続の流れを簡単にまとめると、下図のようになります。

(相続開始から相続税申告までのイメージ)


 

ご家族など身近な方が亡くなると、その方を被相続人とする相続が開始されます。そしてまずは「死亡届の提出」を行わないといけません。その後「遺言書の調査」も進めます。こちらは期限が設けられている手続ではありませんが、早期に対応しておくべき作業です。

また、「相続放棄」や「限定承認」という手続を行う場合は相続開始から3ヶ月以内に対応しないといけません。その判断をするためには「遺産を調べる」必要がありますし、遺産を分け合うために「相続人を調べる」ことも必要です。

所得税に関して「準確定申告」が必要になるケースもあり、そのときは相続開始から4ヶ月以内に申告作業を進めます。

「相続税の申告と納税」については相続開始から10ヶ月以内の期限が設けられています。申告を行うためには相続税の計算が必要で、相続人が複数いるときは遺産分割協議を済ましておくことも必要です。

このように、多数の手続を相続人は期限内に進めなくてはならず、他にもさまざまな作業が発生することもあります。

 

速やかに行う手続


まずは、相続後できるだけ早めの対応が求められる手続を紹介します。

 

死亡届の提出


亡くなったことを市区町村役場に知らせる必要がありますので、「死亡届」の作成・提出が必要です。

この死亡届の提出は、「亡くなった日または亡くなったことを知った日から7日以内」が期限とされています。

※国外で亡くなったときは3ヶ月以内が期限

正当な理由がない限りこの期限内に提出をしなければならず、期限に間に合わない場合、戸籍法に従い5万円以下の過料を徴収されてしまうことがあります。

そのため死亡診断書または死体検案書の発行を受けた後、速やかに手続を進めることを覚えておきましょう。なお、死体検案書とは病院ではなく警察が発行するもので、検死を行ったときに発行されます。

死亡届の用紙については市区町村役場で取得できます。Webサイトからダウンロードできることもありますので、チェックしてみると良いでしょう。死亡届に必要事項を記入し、発行された死亡診断書または死体検案書、そして届出人の印鑑と届出人の身分証明書を持参して提出します。各市区町村にて確認の上、準備を進めましょう。

 

・遺言書を調べる


亡くなった方が生前に遺言書を作成しているかもしれません。遺言書で、遺産の分け方や特定の財産について取得する人物の指定がなされている可能性もあります。

「遺言書は〇〇までに調べておかないといけない」などと、死亡届のように期限が設けられているわけではありませんが、遺産分割協議の必要性や協議内容にも関わってきますので、「遺言書が作成されているかどうか」を調べる必要があるのです。

遺言書については、亡くなった方の自宅や銀行の貸金庫などをチェックしていきましょう。また、公証役場や法務局に保管されていることもあります。

なお、公証役場や法務局以外の場所から遺言書が見つかったときは、すぐに開封してはいけません。「検認」という手続が必要になるからです。検認手続として、遺言書を家庭裁判所に持って行って中身をチェックしてもらいましょう。

※検認:遺言の存在と内容を相続人に知らせ、その後の偽造などを防ぐための手続。

 

3ヶ月以内に行う手続


亡くなった方との仲が悪かったので相続をしたくない、あるいは借金などの負債が多すぎる、という場合は「相続をしない」という選択を取ることできますが、そのための手続は相続開始から3ヶ月以内に行わなければなりません。

そして相続を受け入れる・受け入れない、の判断は遺産の内容を見てから行うのが通常です。そこで期限内に遺産の内容、借金の有無や大きさなども調べておく必要があります。

また、相続税の申告を行う場合にも遺産の内容を把握しておくことが重要となります。

 

・遺産を調べる


相続対象となる遺産は、プラスの価値を持つ財産だけではありません。借金、ローン、未払い料金といったマイナスの価値を持つ財産も相続の対象です。

もし「現金や預貯金合わせて1,000万円」の財産が残っていたとしても、「借金1,500万円」が残っているのなら、全体としては-500万円を相続することになってしまいます。


(相続財産の大きさのイメージ)


このように相続にもリスクが伴いますので、遺産の内容を調べておくことが大事なのです。亡くなった方がどんな財産を持っていたのか、種類や数、それぞれの価額についても調査しましょう。

この作業は遺産分割協議や相続税の申告作業を進めるためにも重要なことです。分割対象の財産がはっきりしないことには相続人間で具体的な協議を進められませんし、相続税の計算をするには財産の価額が分かっていなければなりません。

なお、亡くなった方の借入先を調べる場合には、下記の信用情報機関に個人信用情報の開示を請求して借入先を調べることも可能です。
借金についての調査の不十分なまま相続してしまうことは相続人にとって大きなリスクですので、個人信用情報の開示請求も行うと良いでしょう。


相続人を調べる


「誰が相続人になるのか」についても調べましょう。相続人は遺産分割協議の参加者ですし、相続税の大きさにも関わります。

調査方法ですが、「被相続人の出生から死亡まで一連の戸籍を集めること」が基本です。すべての戸籍を集め、その内容を読み取って被相続人の配偶者や子どもなどを調べていくのです。

相続人になれる人物として法律上定められているのは「配偶者」です。そして①子ども、②直系尊属(被相続人の父母や祖父母などのこと)、③兄弟姉妹もいます。配偶者は常に相続人になることができ、その他の人物は①②③の順に相続人になることができます。先順位の人物がいるとき、後順位の人物は相続することができません。


相続放棄や限定承認(必要に応じて)


遺産を調べた結果、マイナスの価値を持つ財産の方が割合多いことが明らかになれば「相続をしない」、あるいは「限定的に相続する」という選択肢も検討します。

選択肢は次の3つです。

1.単純承認
マイナスの価値を持つ財産も含むすべての財産、その弁済義務などもまるまる引き継ぐこと。
2.相続放棄
全財産の引き継ぎを拒否すること。自宅なども取得できなくなるが、どれだけ大きな借金が残っていても弁済をする必要はない。
3.限定承認
相続で得た財産の範囲内で借金等の弁済を行うという、留保付きで財産を引き継ぐこと。予想外のリスクを避けることができるが、手続が大変。

単純承認・相続放棄・限定承認は、「自分に関する相続があったことを知ってから3ヶ月以内」の期限内に手続を行わなければなりません。

何ら手続を行わないときは単純承認したものとみなされます。単純承認後はその撤回も基本的にできず、借金が残っているときはその弁済義務を相続した方が負うこととなります。


10ヶ月以内に行う手続


相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告が必要です。そして相続税の計算をするためには各人の取得割合を把握する必要がありますので、遺産分割協議を行っていることが前提で、また、申告書の作成も必要です。


遺産分割協議


遺産分割協議は相続人の全員で行います。

また、遺言書で「財産の1/3を遺贈する」などと割合で指定されている受遺者(遺言書の効力により遺産を受け取る人物のこと。)がいる場合、その方は、相続人以外であっても相続人と同等に扱われますので遺産分割協議に参加します。

協議の際、被相続人の配偶者には「配偶者居住権」が認められることも考慮して遺産分割協議を進めると良いでしょう。これは近年できた制度です。住まいとして使う自宅を相続することで相続分のバランスを取るのが難しくなるときでも、配偶者居住権を活用すれば生活費と自宅の両方を確保しやすくなる場合があります。

なお、なかなか協議がまとまらないときは家庭裁判所で「遺産分割調停」を行うことも考えてみましょう。調停の場合、専門家の意見も交えた建設的な話し合いが期待できます。


相続税の申告準備


遺産分割協議により各々が取得する財産が定まれば、相続税の計算を始めます。ただし、すべての相続でその計算や申告作業が義務となるわけではありません。少なくとも遺産の総額が基礎控除額を下回るときは申告を行う必要がありません。


(遺産の総額と相続税申告の必要性)


逆に、遺産の総額が基礎控除額を上回り、納付額が発生するなど、申告が必要になることが明らかになれば必要書類の準備に取り掛かります。

相続税の申告書を作成することはもちろん、本人確認のためにマイナンバーが確認できる書類や運転免許証などの身元確認書類も必要です。相続人であることを示すため、戸籍謄本も用意します。

また、遺言書があるときはその写し、遺産分割協議書の写しも要します。相続財産の内容に応じて必要となる書類は異なりますので、税理士に相談するなどして「何を準備しないといけないのか」について相談すると良いでしょう。


相続税の申告と納税


「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月目の日」までに、相続税の申告と納付をします。例外的に物納で納付することもできますが、金銭で納付するのが原則です。

窓口で直接現金を納める方法のほか、電子納税やクレジットカード納付などの方法もあります。


準確定申告(所得税)が必要になることもある


亡くなった方に収入があったとき、所得税に関する確定申告が必要になることがあります。被相続人が毎年確定申告をしていたというケースでは要注意です。

1年間の途中までの分を申告する手続は「準確定申告」と呼ばれ、期限は「亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」が原則です。通常の確定申告だと翌年の3月15日までの期限が基本ですが、ルールが異なりますので留意しましょう。

※年金収入が400万円以下、その他の所得も年間20万円以下に収まるときは準確定申告不要。


(準確定申告の期限)


ここで紹介したように、相続税の申告、相続に関わる各種手続には期限が設けられています。相続税の計算ミスによりペナルティを課されることもありますので、手続への対応はプロに任せる、あるいはプロのアドバイスを受けて対応することが望ましいです。
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