贈与税は払って節税!相続と贈与の併用で税金を安くする方法
「贈与税は相続税より高い」「できるだけ贈与税を支払わない方がお得」と考えている方もいるのではないでしょうか。でも実は贈与税を支払うことが節税対策につながることもあるのです。
無理に贈与税を避ける必要はなく、あえて負担していくことが、相続税も含めた全体の税金を低く抑えるポイントとなります。今回はその理由ややり方について紹介します。
贈与税を払う方が節税になることもある!
課税対象になる財産の価額が同じなら、相続税の方が納付額を低く抑えることができます。そのため「贈与税の方が負担は大きくなりやすい」という傾向があるのは事実です。
その原因には大きく2つ挙げられます。
※()内は控除額
※「特例税率」は、贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者に限ります。)が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に使用します。
なお、上記で「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します(夫の父からの贈与等には使用できません。)。
ただ、だからといって「贈与税が一切かからないようにした方がお得になる」と言い切ることはできません。
贈与のやり方を工夫すれば、相続のみに頼るよりも税金の負担を軽くできるケースがあります。例えば「財産を一括で贈与せず、複数回に分けて贈与する」というやり方です。
大金を贈与しないのがポイント
贈与税を負担しつつ節税効果を得るうえで覚えておきたいことは、「大金を贈与しないこと」です。
※教育資金や結婚資金、住宅取得を目的とした一括贈与など、非課税特例が使える場合は除く。
大きな税率が適用される形で贈与をしてしまっては、節税効果を得るのは難しいです。
もちろん、1人が1年間に110万円までの贈与を受けた場合には贈与税はかかりません。しかし、贈与する相手が少ないと効果を実現するのに長い年月がかかってしまいます。
そこで、相続税を支払う必要のある人は、必ず10%以上課税される部分の財産があるわけですから、相続税の税率と比較してより低い贈与税の税率の範囲で贈与を行えば節税できますので、これを考慮して効率的に贈与を行っていく必要があるのです。
相続発生までに時間があると思われるときは、毎年なるべくより低い贈与税率の範囲で相続人にこまめに贈与していくとよいと考えます。
具体例で負担額を比較
数字を使って、贈与税を払いつつ節税効果がどのように得られるのかを比較してみます。
※簡単のため、法定相続人は1人、債務控除や税額控除などの適用がない場合を想定。
※各種税率と控除の対応は速算表を参照。
No.4155 相続税の税率:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税):
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
例)財産1億円、300万円の贈与を5年間継続するケース
《 相続のみの場合 》
遺産1億円、基礎控除額3,600万円とすれば、次のように税額が算出される。
法定相続分に応ずる取得金額 = 1億円-3,600万円
= 6,400万円
相続税額 = 6,400万円×30%-700万円
= 1,220万円
《 贈与税も払う場合 》
300万円の贈与を行う場合、贈与税額は次のように求まる。
贈与税額 = (300万円-110万円)×10%
= 19万円
これを5年間繰り返すと贈与税額はトータル95万円。遺産は1億円から1,500万円少なくなった8,500万円となる。
法定相続分に応ずる取得金額 = 8,500万円-3,600万円
= 4,900万円
相続税額 = 4,900万円×20%-200万円
= 780万円
以上から、全体としてかかった税金は贈与税の95万円+相続税の780万円の「875万円」であるとわかります。相続のみだと「1,220万円」の負担が発生しますので、あえて贈与税を払うことが節税に繋がるとわかったのではないでしょうか。
贈与税の特例税率が適用されるケース
「特例税率」が適用される場合、上記の「一般税率」に比べて少し負担が小さくなります。この場合、節税効果を維持しつつ贈与できる金額の規模を少し大きくすることができます。
例)財産7,000万円、500万円の贈与を6年間継続するケース
《 相続のみの場合 》
遺産7,000万円、基礎控除額3,600万円とすれば、次のように税額が算出される。
法定相続分に応ずる取得金額 = 7,000万円-3,600万円
= 3,400万円
相続税額 = 3,400万円×20%-200万円
= 480万円
《 贈与税も払う場合 》
500万円の贈与を子どもに対して行う場合、贈与税額は次のように求まる。
贈与税額 = (500万円-110万円)×15%-10万円
= 48.5万円
これを6年間繰り返すと贈与税額はトータル291万円。遺産は7,000万円から3,000万円少なくなった4,000万円となる。
法定相続分に応ずる取得金額 = 4,000万円-3,600万円
= 400万円
相続税額 = 400万円×10%
= 40万円
以上から、全体としてかかった税金は贈与税の291万円+相続税の40万円の「331万円」であるとわかりました。相続のみだと「480万円」の負担が発生しますので、100万円以上の節税効果が得られたことになります。
生前贈与加算には要注意
贈与をすることが節税対策につながりますが、「生前贈与加算」には注意してください。生前贈与加算とは、相続開始前一定期間内の贈与財産を相続財産として計算するルールのことで、2024年以降に関しては7年間が適用期間となります。
そのためこつこつやってきた生前贈与が意味をなさなくなるおそれもあります。この点にも留意しつつ、計画的に、早めに対策を打っておくことが重要といえます。
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