相続放棄手続きの期限・必要書類・費用・流れを解説

相続放棄は「借金を引き継がないための方法」として有効ですが、単に「いりません」と家族に伝えるだけでは成立しません。
期限までに手続きを行わなければ放棄は認められず、借金を含めた財産をすべて引き継ぐことになります。
本記事では、相続放棄を行うための具体的な流れ、必要書類や費用、そして失敗を防ぐための注意点をわかりやすく解説します。
相続放棄の期限と基本ルール
相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産や借金を一切受け継がないようにするための手続きです。被相続人が多額の負債を抱えていた場合でも、相続放棄を行えば債務を承継せずに済みます。
この手続きは、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内」に行わなければなりません。
期限を過ぎると、プラスの財産も借金もすべて引き継ぐ「単純承認」とみなされるため、期限内に所定の手続きを完了させる必要があります。詳細は、2025年11月27日のブログをご参照ください。
相続放棄手続きの具体的な流れ
相続放棄手続きは、家庭裁判所に対して行います。手続きで必要になる書類は、放棄する人の続柄によって異なります。

STEP1:相続財産の調査
相続放棄をする場合は、最初に被相続人の全財産を正確に把握することから始めます。相続する権利を放棄すれば借金を背負うリスクはなくなりますが、プラスの財産を受け継ぐこともできなくなります。
そのため、原則として相続放棄の期限までに財産調査を行い、放棄するかどうか判断する必要があります。ただし、被相続人の財産状況によっては、期限内に調査を終わらせるのが困難な場合もあるため、この場合には、家庭裁判所に申立てをし、相続放棄の期限を延長することも考えられます。
なお、財産調査をするためには、その内容等を把握するための資料が必要になります。例えば預貯金であれば通帳、不動産であれば固定資産税の納税通知書等ですが、個々の財産状況により異なりますので、ここでの詳述は割愛します。
STEP2:必要書類の収集
相続放棄を行う際は、「相続放棄申述書」以外にも戸籍謄本などの書類を提出する必要があります。戸籍謄本を郵送で請求する場合は取得に1〜2週間かかることもあるため、早めに準備を始めましょう。
また、用意すべき書類は、放棄する人と被相続人の続柄によって異なるため、事前に確認してください。
全員共通の必要書類
相続放棄する人が共通して必要になる書類は次の通りです。<共通書類>
● 相続放棄申述書
● 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
● 申述人(放棄する人)の戸籍謄本
関係性に応じて追加で必要となる書類
被相続人との関係に応じて、次の戸籍謄本が追加で必要となります。<配偶者が放棄する場合>
● 被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
<子が放棄する場合>
● 被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
● 申述人が代襲相続人の場合:親(本来の相続人)の死亡記載のある戸籍謄本
<親・祖父母が放棄する場合>
● 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
● 被相続人の子が全員亡くなっている場合:子(及びその代襲者)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
<兄弟姉妹が放棄する場合>
● 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
● 被相続人の子が全員亡くなっている場合:子(及びその代襲者)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
● 直系尊属(親や祖父母)の死亡記載のある戸籍謄本
● 申述人が代襲相続人(被相続人の甥姪)の場合:親(本来の相続人)の死亡記載のある戸籍謄本
相続放棄の費用
相続放棄を行う際にかかる費用は次の通りです。相続人が相続手続きを行うことも可能ですが、専門家に依頼する際は報酬費用が別途発生します。
<相続放棄にかかる費用>
● 収入印紙:800円分
● 連絡用の郵便切手:数百円から数千円
● 戸籍謄本:数百円から数千円
STEP3:申述書の作成・提出
相続放棄をするためには、家庭裁判所へ申述(申立て)をしなければなりません。家庭裁判所のホームページに掲載されている「相続放棄申述書」に必要事項を記入し、必要書類を添えて被相続人の最後の住所地(住民票で定めていた住所)を管轄する家庭裁判所へ提出します。
被相続人が住民票上の住所ではない場所を生活の拠点としていた場合は、生活の本拠地を被相続人の住所として取り扱います。
なお、提出は郵送でも可能です。
申述書には、申述人の本籍・住所・氏名、被相続人との関係、放棄理由などを記載します。
未成年者が相続放棄をする場合は、法定代理人等の記載も必要になるため注意してください。


STEP4:裁判所からの照会書への回答
相続放棄申述書を提出すると、家庭裁判所から「相続放棄照会書」が届くことがあります。相続放棄は一度行うと撤回できないため、裁判所は「本当に放棄の意思があるか」「亡くなった人の財産を使用していないか」といった点を確認します。
照会書が届いた場合は、記載内容をよく確認し、同封されている「相続放棄回答書」に必要事項を記入し、相続放棄申述書に押印した印鑑と同じ印鑑で押印したうえで返送してください。
STEP5:相続放棄の完了(受理通知書の受領)
相続放棄が認められると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。この通知書は、法的に相続放棄が完了したことを示す重要な書類であり、再発行が認められないため、大切に保管してください。
通知書を受け取った時点で手続きは完了し、放棄した人は初めから相続人ではなかった扱いとなります。
相続放棄を円滑に進めるための実務ポイント
相続放棄の手続きを確実に進めるためには、制度の違いや専門家へ依頼する判断、放棄後に残る管理責任について理解しておくことが重要です。相続放棄後も不動産の管理責任が残る場合がある
相続放棄をしても、次の相続人が管理を始めるまでの間は、現に占有している遺産を放置できない場合があります。これは「保存義務」と呼ばれるもので、相続しない不動産であっても放置することは認められません。
万が一、自然災害で老朽化した家屋や塀が倒壊し、近隣住民に被害が及んだ場合には、損害賠償請求を受けるリスクが生じます。
専門家に手続きを依頼すべきケース
相続放棄が認められなければ、多額の借金を背負うリスクが生じるため、専門家に手続きを依頼することは有効な選択肢です。相続放棄手続きを相続人自身が行うことも可能ですが、状況によっては専門家への依頼が望ましい場合があります。
たとえば、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合は、必要な戸籍謄本を漏れなく収集するのが大変です。
また、相続発生後に遺産を使用してしまうと、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
「これが遺産の使用に当たるのでは」と不安を感じるときは、あらかじめ専門家に相談して判断を仰ぐことで、安心して手続きを進められるようになります。
まとめ
相続放棄で最も重要なのは、期限内に申述書を提出することです。期限を過ぎれば相続放棄は認められず、借金を含むすべての財産を引き継ぐことになります。
書類の収集には時間がかかるため、「借金があるかもしれない」とわかった時点で早めに準備を始めることが安心につながります。
相続手続きに不安がある場合は、専門家の相談窓口を活用することをおすすめします。
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